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三砂ちづる「オニババ化する女たち」

なんつーか、こう、納得行かない本だなぁ。
反フェミと言われている本だから、きっと私などは反発必至なのだろうと、
敢えてそこを期待して読んだのだけど、
反発というのではなく、脱力しちゃう感じ。
反フェミというのではないねぇ。
三砂ちづる「オニババ化する女たち」
これ、ジャンルは何ッスかね。
エッセイ?
お粗末ながら、雰囲気だけ、文をまねしてみると、
  女性は自分の体を肯定的に捕らえて、
  月経や出産などについて積極的に考えるべきです。
  そのようにしてきて、出産にも良いイメージを持っていると、
  産むだけなら百人でも産みたい、という女性もたくさんいるのです。
  出産に悪いイメージを持つことは、
  幼児虐待や育児ノイローゼにも繋がっているのではないでしょうか。
とまぁ、万事こんな感じでして、
「という話をよく耳にします」とか「のではないでしょうか」とか、
「~と思うのです。そこが問題なのでしょう。」とか、
あーあなたはそう思うのねー、そうなんだー、という感じ。
議論する気はないんだろうね。
もっと社会学的な内容を(勝手に)期待していたので、
その点は激しくがっかり。

実は、巷で言われるほど、反フェミな内容とは思わなかった。
自分が女性であることを大事にしよう、前向きに捕らえようというのは、
フェミでも、同じく主張しているところである。
女性ならば、出産する機能を持っているのだから、使うべきである、というのも、
実は、別に全くフェミVS反フェミの衝突とは関係がないと思う。
フェミにもラジカルだのリベラルだの、色々あるけれど、
出産しているフェミな人も多い。
それでは何がフェミのあごの下のウロコに触れるのか。

思うに「結婚と出産以外に女の幸せはない」と言っているところじゃないか。
自分が最も幸せと信じて選択した道以外に、
それ以上の幸せがあるとは、人間想像しづらいし、
そう言われても、なかなか納得できない。
非婚を選んでバリバリ働いている女性に
「結婚と出産は最高に幸せだよ」と言ってもスルーされるだろうし、
若くして結婚と出産を選択した女性に
「働いて自己実現するのは最高に幸せだよ」と言ってもスルーされるだろう。
そこで「これ以外にない!」みたいに断言されるのが
鼻に付くのじゃないかねぇ。
断言しなくても、色々選択肢があって良いと思うんだが。
てなことを言うと、作者先生には、
そんな人は若い男の子のお尻を舐める
下品なオニババおばさんになって下さって結構です、
とか、言われるんだろうなぁ(笑)

女性がフルタイムで働くことは、全く珍しくなくなった。
それこそが女性の自己実現であり、
望ましい姿であると、思われていた時代もあると思う。
しかし、ぶっちゃけ、社会はまだ異性愛者男性社会だ。
その中の基準で、デキる女性というのは、
男性と「同等」な能力であることを求められ、
かつ、男性と「対等」であることは求められない。
これは、男性社会側の見方からすれば、
「自分たちは女性の社会参加の門戸を閉ざしているわけではない。
 女性も頑張れば自分たちと対等に働くことができる。
 頑張らない女性が悪い」
とまあ、こういうリクツになる。
男女雇用機会均等法がフェミから非常に反発を受けたのは、
この論理を強化するものに他ならないからだ。
(同様の理論で、夫婦別姓に反対するフェミも多い。
 夫婦別姓を認めることは、結婚制度を認めることになるからだ。
 フェミはみんな男女雇用機会均等法と夫婦別姓に賛成と、思わない方が良い。
 むしろ反対。)

そんなわけで、
今の社会システムのままで男性と対等に働けなんてありえない!、という
理論を持っているフェミな人も多い。
裏返せば、今の社会システムなんかぶっ壊せ!と言っているわけで、
ラディカルなフェミ(つか、フェミの殆どはラディカルなんだが)は、
バリバリ働く女性像を、もろ手を挙げて賛成しているわけでもないっぽい。
なんてところを考えると、
働くだけの女なんて詰まんないわよーという著者の意見も、
(表層の部分ならば)そうフェミと遠くないようにも見える。

その男性社会になじんだ女性も多いと思うが、
全ての女性がそうなるわけではないし、
そうなりたいと思っているわけではない。
「女性が働くのは善」という、固定した価値観がまかり通ってしまうと、
それ以外の姿は「良くない」と思われてしまう。
テレビなどで取り上げられるスゴい女性たちは、
スゴいからテレビに出るのであって、大体の女性はそうでない。
頑張ればああなるのではなくて、あの人たちはスゴいんである。
(スゴいという表現自体が、この価値観を肯定しているからイヤなんだけど、
 便宜上、そう書いておくよ。
 スゴいのは、絶対的にすごいのではなくて、
 男性社会への適応力がスゴいわけで、それが善かと言われると、また別)
そこで、スゴくない女性たちが
「社会でバリバリと働けない女性は、本人が悪い」と烙印を押されたら、
これはもう暴れて当然である。

なわけで、これはその「暴れた」結果の本なのじゃないかと思うわけ。
ほら、それほど反フェミでもない気がするでしょ。
少し前まで流行っていた、妙な「ジェンフリ」の揺り戻しとも思えるし。

私が一番鼻に付いたのは、
新興宗教みたいな部分が多かったこと(笑)
出産をすると宇宙との一体感を持てますとか、
生命としての使命を日々感じながら暮らしましょうとか。
「宇宙」とか「使命」とかの用語が、なんかアレ。
月経前症候群が重いのは、排卵時に無益に流されていった卵子の怨念です、とかも、
ちょっとアレすぎ(笑)
いや、気持ちはわかる。
わかるんだけど、
こう声高に「女性ってスバラシイィィィィィッ!」と書かれると、
ひるんでしまうというか、なんか気持ち悪いと思ってしまった。
あ、後はショッピングにハマる女性はセックスが足りないんだとか、
そういう「どこから来るの!?」的なリクツもつらかった。
「女はみんなレイプされたいんだ」っつーのとそう変わらないじゃん。
もっとさ、筋道立てて話そうぜ。
読んでて疲れちゃったよ。

でもこうして何かを言いたくなるのだから、
ある意味、名著なのか(笑)
by xiaoxia | 2006-07-07 17:41 | 読む
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