人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」読了


信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス
宇月原 晴明 / 新潮社

最近、文学賞を取った作品を選んで読んでいる。
今までの経験で、この賞をとった作品はだいたい面白い、というのがあって、
芥川賞(女性作家)、ファンタジーノベル大賞、泉鏡花賞あたり。
後は時々SF大賞、直木賞と乱歩賞。
本屋大賞も良いんだけど、
ときおりセイシュンなリア充臭が鼻につくのがあるので、
選んで読むほうが良いっぽい、と最近体得。
夜ピクとか、確かに非常に良い作品だけど、読まんでも良かったなみたいな。
このミスもいいなぁと思っているけど、まだ未着手。

で、この作品は、ファンタジーノベル大賞受賞作。
しょっぱなの酒見賢一「後宮小説」から、
ホントに良い作品を選出してるなぁと思う。
剣と竜と魔法が苦手なので、基本的に欧米風ファンタジーは読まないのだが、
この受賞作は読む。

そして内容。
信長はフタナリでした!という衝撃設定だが、何しろ面白い。
古代ローマ皇帝ヘリオガバルスを中心とし、
古代から第2次大戦中へ、日本からメキシコからヨーロッパから、
とにかく古今東西の色々な事象がリンクしまくる。
澁澤龍彦好きなんで、
ヘリオガバルスというだけで食いついちゃったのだが、
知らなくても十分面白いと思う。
作者は詩作もする人のようで、
冒頭から小説らしからぬ、謳うような文体。
押し付け気味な強い調子も、トンデモ設定も、
すべてを幻想的な雰囲気に仕上げてしまう。
印象としては、高橋克彦のSFモノ(特に「竜の柩」あたり)とか、
半村良の伝奇SFとか、
ああいうのに似ている。
でももっととろりとしていて粘度の高い雰囲気。

ふとしたところに
「これは○○の中のセリフじゃないか!」とか、
「○○の伝説を踏襲しているんだな」とかが出てくる。
当然、小説だから、脚注なんてものはない。
わかる人にだけわかる。
私の知識ではほんのちょっとしかわからなかったけど、
きっと全部わかったらすごく楽しいのだろうな。
ニヤニヤしちゃいそうだ。
衒学的なものが好きな人には、ものすごくオススメ。

ヘリオガバルスといえば、
ネット上のレビューを見てみたら、
「ヘリオガルバス」と書いている人が多数。
当然「エラガルバス」になっちゃう。
名前の中にバール神が含まれている、という記述が小説内にあったじゃん。
ちゃんと読んでないのだなぁと。
私もカタカナを読み取るのは苦手なので、良く間違うけど。
漢字が含まれない単語って、ぱっと読めないよねー(^^;;
by xiaoxia | 2009-05-15 18:08 | 読む
<< hadoop と hbase のメモ a >>